老後の生活を安心して過ごすためには、いくら必要か、どんな投資法が有利か。頭を悩ませている人も多いことでしょう。ライフネット生命創業者であり、立明館アジア太平洋大学学長の出口治明さんは、「老後のためにお金を貯めようという発想自体が間違っている」と指摘。その理由とは――。
※本稿は、出口治明『自分の頭で考える日本の論点』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/erdikocak
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貯蓄か投資か、「72のルール」で考えれば答えは明快
お金の運用についての大原則に、「72のルール」があります。
「72年÷金利(%)」が、元金が2倍になる年数の目安という法則です。
たとえば、銀行の普通預金の金利はいまだいたい0.001%ぐらいです。72÷0.001=72000となり、銀行の普通預金に預けているだけでは元金が2倍になるのに7万2000年かかるという計算になります。石器時代までさかのぼって貯蓄をしてやっと2倍です。ちなみに、僕が日本生命に入社した当時(1972年)の社内預金の金利は11%でしたから、6年半で元金が2倍になっていたことになります。
「72のルール」で考えれば、現在のような低金利下では、お金を殖やしたい場合には貯蓄では意味がないことがよくわかります。一般論で述べれば、金利が低いときは貯蓄より投資ということになります。
相対的に安全で有利な唯一の投資法とは
投資とは、原則として元本の保証がないものにお金を投じることです。投資の代表は株式や投資信託です。貯蓄は元本が保護されますが、投資では保護されません。それはかなり怖いことのように思われるかもしれません。
そのリスクをなくすにはどうしたらいいか。それは「安いときに買って高いときに売る」という一言に尽きます。
ただし問題は、いつが安いときであり、いつが高いときであるかがわからないことです。ふつうの市民による投資の歴史は比較的新しく、まだ200年ぐらいしか経っていません。しかも、連合王国(イギリス)とアメリカにしかその経験がありません。彼らが編み出した相対的に安全で有利な唯一の投資法は、「ドルコスト平均法」といわれるものです。
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