前編では、確定申告の必要性や計算方法、必要書類などについて述べた。後編では収入、必要経費と税額計算について少し詳しく説明していこう。
1 不動産所得の収入金額となるもの
・賃料収入、共益費収入、礼金、権利金、更新料
大家さんの収入には毎月々受け取る賃料収入、共益費収入と、新たな賃借人から受け取る礼金や権利金、契約更新時に受け取る更新料など受け取る名称は異なっても賃借人から受け取り返還の義務がないものは全て不動産所得の収入金額となる。
管理会社の管理費や広告料などを差し引いた金額が入金されるが、大家さんの収入となる金額はこれらの経費を差し引く前の金額である。
また、前編でも触れたが、その年中に受け取る権利のある金額が収入金額となるので翌年の1月分を受け取ることが多い12月の入金には注意が必要だ。
もっとも12月の途中で入居があれば日割の家賃で12月分の家賃も含まれている場合もあるので気をつけよう。
・受け取った保証金、敷金
通常、保証金は賃借人へ退去時に返還することになっており不動産所得の収入金額とはならない。敷金も退去時に返還される部分については収入金額にならないが敷引きなどとして返還されない部分については、収入金額に計上しなければならない。
契約書の条項により返還を要しないことが確定する年にて収入金額として計上する必要がある。
2 必要経費となるもの
不動産所得の金額の計算上必要経費になるものには、次のような費目がある。
租税公課、損害保険料、修繕費、減価償却費、従業員給与及び賞与、賃貸用不動産等を取得するための借入金の利子、地代家賃、管理費、仲介手数料、広告料など。これらの中で留意を要する項目について、以下で説明する。
また、一棟のマンションのうち一室は大家さんの住まいとして使用し、他の部屋を貸している場合の固定資産税、都市計画税のように、一つの支出が業務用部分と生活用部分の両方に関わりがある費用は家事関連費といわれる。
家事関連費で必要経費に算入できる金額は、取引の記録等に基づいて業務の遂行上直接必要であった部分が明らかに区分できる場合、その部分に相当する金額のみを必要経費とすることができる。例えば、マンションの床面積の総床面積に占める貸室の面積割合など、合理的な方法により按分して計算した金額が必要経費となる。
収入金額と同様、この1年間に支払う義務が生じた経費であることから気をつけよう。
・租税公課
賃貸物件の固定資産税、都市計画税、収入印紙代は必要経費になる。なお、自宅兼事務所の固定資産税、都市計画税や自動車に関連する税は家事関連費となる。
また、所得税並びに住民税は経費にならないが、事業税は納めた年の必要経費となる。
・損害保険料
賃貸物件の火災保険料は必要経費となるが、自動車の保険は家事関連費となる。
・修繕費
貸室の修繕費用やリフォーム代金などは必要経費となる。ただし、資本的支出といわれる固定資産の使用可能期間を延長又は価額を増加させる部分に対応する支出をした場合には、その内容や金額により減価償却しなければいけない場合があり注意が必要だ。資本的支出は、大きな金額の修繕をしたなら間違った場合の影響が大きい。税理士に相談するか税務署で確認しよう。
・減価償却費
建物や建物附属設備など過去に取得した固定資産を減価償却という計算で、年々の必要経費として計上するものである。資産、用途など細かな種類毎に耐用年数が定められている。
所得税では原則として定額法という計算方法で計算するが、車両運搬具や器具備品は事前に届出をすれば定率法で計算することもできる。計算の元となる建物などの金額が高額であり、納税する所得税などに大きな影響を及ぼす可能性がある。耐用年数の判断に知識がいるから税理士に相談するか所轄の税務署で確認しよう。
・給与及び賞与
不動産所得の場合には、事業的規模(5棟10室以上)で不動産賃貸を営んでいる場合で、青色申告をしていれば生計を一にしている親族に対して事前に届け出た範囲の金額で専従者給与を支払うことができ、白色申告の場合には生計を一にする者について専従者控除を取ることができるが必要経費にできる金額が小さい。親族でも生計を一にしていなければ、通常に給与を払うことができる。
・支払利息
賃貸用不動産等を取得するための借入金の利子は必要経費となる。建物の一部を居宅にし、一部を賃貸にしているような場合には家事関連費として案分計算が必要となる。
また、新たに不動産貸付業を始めた場合は、その資金の借入れの日から使用開始の日までの期間に対応する部分の金額については、取得価額に算入しなければならない。
なお、土地の取得のための負債利子は、不動産所得の金額が損失となった場合にはその土地の取得のための負債利子に相当する部分の損失は生じなかったとみなされる。
・地代家賃
他人から土地を借りて賃貸物件を建てた場合の地代は必要経費になるが、生計を一にする親族から土地を借りて賃貸物件を建てた場合の地代は必要経費とはならない。ただし、その親族が負担すべき固定資産税・都市計画税は必要経費とできる。
地代家賃に限らず、生計を一にする親族に対する支出は専従者給与を除き必要経費にはならないが、生計を一にする親族の有する資産を使用する場合にはその者が負担すべき税や保険料を必要経費とすることができる。
・修繕積立金
積立金という名称なので必要経費にならないようにも思われるが、本人が自由に使えるものではなく必要経費扱いできる。
・青色申告特別控除
青色申告の承認を受け、一定の記帳要件を満たせば10万円または65万円(期限内申告も要件となる)を不動産所得と事業所得の合計金額を限度として所得金額から控除できる。
3 不動産所得の金額と所得の合算、損益通算
ここまでで説明した収入金額から必要経費を差し引いた金額が不動産所得である。これにサラリーマン大家さんは給与所得(源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」)を合算した金額が課税される対象(合計所得金額)となる。
また、不動産所得が赤字となった場合には、給与所得のプラスと相殺することになるが、これを損益通算という。給与所得で納めた税金が還付されることになるので、不動産所得が赤字になっても必ず確定申告しよう。
4 所得控除
所得控除とは、社会保険料控除、生命保険料控除、配偶者控除、扶養控除などのことであり、サラリーマン大家さんの場合だと源泉徴収票の「所得控除の額の合計額」に記載の金額となる。ただし、専従者給与を受けている者については配偶者控除や扶養控除を受けることができない。
扶養される者の所得金額が上限を超えると配偶者控除や扶養控除が受けられず、配偶者控除は本人の所得金額が1,000万円を超えると受けられない。
また、医療費控除や、ふるさと納税した場合の寄附金控除も所得控除である。寄附金控除は、ワンストップ特例の申請をしていても必ず記載すること。
5 所得税額の計算
合計所得金額から所得控除を差し引いた金額に対して、税率を乗じて所得税額を計算する。
これに加えて、復興特別所得税が所得税額の2.1%課税されることになっており、ここから勤務先から受け取った給与に対する所得税額等を控除して納めるべき所得税額等が求められる。
前編、後編と2回に分けて所得税の確定申告について、重要な事項や一般的な注意点を説明したが、間違いのないように申告するためには国税庁のホームページにある次のパンフレットを読んで欲しい。
・確定申告書
・収支計算書(白色申告)
・青色申告決算書(青色申告)
税理士に依頼するなら早めに頼もう。初めての依頼なら2月の半ばぐらいまでに頼まないと引き受けてもらえないかも知れない。
不動産投資をするなら税金には強くなった方が良い。これらのパンフレットや国税庁のタックスアンサーなどを読んで税金に強いサラリーマン大家さんになろう。
執筆:公認会計士・税理士 伊藤誠一
プロフィール
銀行、国税局勤務を経て、公認会計士・税理士となる。中堅クラスの企業の税務顧問を中心に、これらの企業の事業承継プランニングやオーナーの相続税対策など多数の案件に関与している。また、公認会計士としての知見を生かし、複数社の社外監査役として企業経営に関わっている。
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February 02, 2020 at 04:08AM
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