日本銀行は4月13日に「中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会」の第3回会合を開催した。中央銀行発行のデジタル円、いわゆるCBDCは、概念実証のフェーズ1を終了し、4月からはフェーズ2に移行する。第3回会合では、今後の進め方などについて民間事業者や政府との情報共有および意見交換を行った。
このように実証実験が進む中、日銀はデジタル通貨をどう考えているのか。日銀の内田眞一理事は「CBDCを発行するとすれば」と題した開会あいさつで、現時点でのデジタル通貨との向き合い方を話した。
民間デジタル通貨とどう向き合うか
直近の大きな変化といえば、民間が発行するデジタル通貨の急伸だ。2020年秋にCBDCの方針を発表してからの1年半で、法定通貨と価値が連動する民間デジタル通貨、いわゆるステーブルコインの存在感が増した。
「民間のステーブルコインは、海外を中心に存在感を着実に高めてきており、その残高は、日本円換算で10兆円を優に上回る規模」だと内田氏。当初は、中国のデジタル元やフェイスブック(現メタ)のLibraが念頭に置かれることが多かったCBDCだが、直近は民間ステーブルコインとどう向き合うかが重要な観点になってきている。
内田氏は、民間ステーブルコインにおいては、マネーロンダリングやサイバーリスク、消費者や投資家保護、金融システムの安定への影響など、さまざまな課題を挙げた。これらの解決策として、米国は発行を「預金取扱機関」、つまり銀行に限定する方向だが、ユーロや日本では、ノンバンクによる発行も認める方針だ。
国内では、デジタル通貨フォーラムを通じて、銀行預金を裏付けとしたステーブルコインDCJPYをメガバンクなどが発行する計画が進んでいる(記事参照)。一方で、前払式支払手段、いわゆる電子マネーという法的な建て付けで、スタートアップJPYC社などがステーブルコインを発行、発行総額は3億円超など規模を増やしている状況だ(記事参照)。
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ステーブルコイン発行は「もうからない」
このように民間ステーブルコインの取り組みが増加する中で、内田氏が懸念するのが「ステーブルコインの発行者は、デジタル決済そのものではなかなかもうからない」という点だ。発行業務や決済業務自体では利益が出ないため、プラットフォーマーとなってデータ利用や広告で収入を得たり、顧客を囲い込んで加盟店手数料を取るという形を取る。
これはクレジットカードやコード決済などの決済事業者においては一般的なビジネスモデルだ。しかし、ステーブルコインにおいては「決済システム全体としてみた場合、細切れ化(フラグメンテーション)や独占といった問題が深刻になっていく可能性を無視できない」と内田氏は指摘する。
ならば、もうからないステーブルコインの発行は中央銀行がCBDCとして行い、民間事業者はCBDCの上にさまざまなサービスを載せて提供するという方法もあり得る。「安全性と相互運用性という全体利益の対価なので、これを非競争領域として、金融界あるいはより広く社会全体で提供していくということもひとつの選択肢だ」(内田氏)
CBDC発行は国民的な判断
なお、CBDCは紙幣と違いデジタル化されているため、技術的にはマイナス金利を実現することも可能だ。これは保有しているCBDCの額が、例えば毎年1%ずつ自動的に減少するような仕組みを指す。日銀は現在、金融機関が日銀に預ける当座預金に対してマイナス金利を適用しているが、より広い対象に対してマイナス金利を適用することで、お金が消費に回り経済の活性化につながるという意見がある。
これに対し、内田氏は「こうした観点でCBDCを導入することはない。そうした『動機』に、国民的合意が得られるとは考えられないし、実務的にも、現金が並存することを考えると現実性がない」とした。
また、CBDCの技術的な検証は引き続き進めるものの、「日本銀行は、CBDCを発行するか否かについて、決定していない」と改めて強調。「日本銀行あるいは金融界だけで決められることではなく、国民的な判断になる」と話した。
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