資金運用・調達の双方に影響する。
収益を圧迫してきた低金利政策の転換を、銀行業界はもろ手を挙げて歓迎している(撮影:梅谷秀司)
鳴動する政治。終息しない戦乱。乱高下する市況。その先にあるのは活況か、暗転か――。
『週刊東洋経済』12月23-30日 新春合併特大号の特集は「2024年大予測」。世界と日本の行方を総展望する。
「金利ある世界」がとうとう日本にも訪れるのか──。銀行業界にとって、2024年は勝負の年になりそうだ。
「円定期預金金利の改定を行います」。11月1日、三菱UFJ銀行の発表が銀行業界の話題をさらった。年0.002%だった定期預金金利は、11月6日から5年物が0.07%に、10年物が100倍の0.2%に設定された。
12年ぶりとなる定期預金金利の引き上げに、雪崩を打つように他行も倣った。真っ先に三井住友信託銀が追随し、他メガバンクや地方銀行、信用金庫も続々と引き上げを表明した。「他行の追随を見て、われわれも決断せざるをえなかった」(東北地方の金融機関)。
各行の預金調達は普通預金が大半で、定期預金の割合はわずかだ。それでも、低下一辺倒だった預金金利が反転した事実は重い。
金利上昇で吹く追い風
金利の引き上げは、日本の長期金利上昇に平仄(ひょうそく)を合わせた動きだ。日本銀行は22年末、23年7月、10月と続けてYCC(イールドカーブコントロール・長短金利操作)を柔軟化した。長期金利上昇を実質的に容認した結果、指標となる10年物国債利回りは年初の0.4%水準から10月には一時0.95%をつけた。
金利上昇は銀行の資金調達・運用の双方に影響を及ぼす。銀行は集めた預金を貸し出しや有価証券投資などに回し、預金金利と運用利回りとの差で収益を得ている。国債利回りの上昇は、銀行が新規に投資する国債からの利息収入の増加につながる。
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